今回は「カンピロバクター腸炎」について解説していきます。
カンピロバクター腸炎は”Campylobacter属”という細菌感染が原因で起こる腸炎です。
細菌性腸炎は、ウイルス性腸炎よりも重症化することが多く、注意が必要です。
このカンピロバクター腸炎も重症化する場合は、入院の必要がある腸炎として知られています。いつもと比べて症状がひどい腸炎になった場合はもしかしたらカンピロバクター腸炎かもしれませんから、こちらのコラムを読んで頂き、一度消化器内科を受診することをお勧めします。
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原因について
カンピロバクターはウシ、ブタ、ヒツジなど様々な肉類から感染しますが、一番有名なのは、鶏肉からの感染です。加熱不十分な調理だと感染のリスクが高く、一番危険なのは、「鳥刺」です。新鮮であっても危険です。鳥刺は美味しいかもしれませんが、カンピロバクター感染の観点からすると、食べることを推奨しません。
焼き鳥やバーベキューなどでもカンピロバクター腸炎に感染することがあります。
カンピロバクター腸炎の特徴は「やや長い潜伏期間」です。一般的なウイルス性腸炎は摂取後24時間以内くらいに症状が出始めることが多いですが、カンピロバクター腸炎の場合は潜伏期間は「2日から5日」といわれています。長い場合は7日くらい経ってから発症する場合もあります。この後説明する症状に当てはまったら、もしかしたらと、1週間前まで食事の記憶を遡ってみて下さい。
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症状・診断について
症状は一般的な胃腸炎と同じように、腹痛、下痢、嘔気・嘔吐が生じることが多いですが、カンピロバクター腸炎では発熱(寒気が出たり、高熱が出ます)や倦怠感が強く、頭痛などの症状も強く出やすいことが知られています。カンピロバクター腸炎は“回盲部”という小腸と大腸の繋ぎ目の部分に炎症を伴うことが多く、右下腹部の痛みが強くなることが多いです。また腸の炎症がひどい場合は血便が出ることもあります。症状は3日から5日くらいで治ることが多いですが、長引く場合もあります。
診断については、便培養検査を行い、菌が検出されることで診断となりますが、便培養の結果が出るまでには5日くらいかかってしまうので、結果が出る頃には、症状が治まっていることが多く、臨床診断(病歴や症状から診断をつけること)となる場合が多いです。
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治療法について
カンピロバクター腸炎は細菌性腸炎の一種なので、抗生物質(抗生剤)を飲めば良くなるイメージはあるかもしれませんが、必ずしも抗生剤を使用する必要はありません。
症状が軽い場合は、下痢で細菌が体外に流れ出ていけば、自然に快方に向かうことが多いです。抗生剤を安易に使用すると、抗生剤により良い腸内細菌も殺菌してしまい、下痢が長期間続いたり、思わぬ副作用が出たりします。元々免疫不全など基礎疾患があり重症化のリスクが高い場合や腸管感染から血液中に菌が入り、菌血症となった場合は、抗生剤による治療が必要と考えます。
腹痛が強く、食事や水分摂取が摂れず、脱水が進行している、もしくは進行が予想される、日常生活継続が困難な程全身状態が悪化している場合は、入院での加療を推奨します。
まとめ
今回は「カンピロバクター腸炎」について解説しました。
夏の屋台やバーベキューなどで加熱不十分な肉類の摂取に注意しましょう。
特に「鳥刺」はカンピロバクター腸炎のリスクが高い食事として知られているので、食べる時は覚悟して食べましょう。
軽症の場合は自然に治りますが、症状が強い場合は一度消化器内科を受診し、抗生剤の治療の必要の有無や入院治療の必要性の判断を仰ぐ必要がありますから、今回のコラムを読んで症状が当てはまるようであれば、医師にご相談下さい。
■クリニック名
医療法人社団杏音会 土屋クリニック
■院長
土屋 杏平
■所在地
〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12−15
電話番号03-3806-9029