今回は消化器内科医が伝えたい食事療法についてお話しします。
昨今、食にまつわる情報は様々であり、正しい情報、間違った情報というのを見分けるのは至難の技です。年齢、体格、性別、人種によっても“良い食事”というのは異なります。
このコラムでは消化器内科の専門医が多く所属する日本消化器病学会が提唱する食事療法に基づいて、皆様にお伝えしたいと思います。
今回は「1日2食?3食?どちらがいいんですか?」というよく聞かれる質問について解説します。
結論から言うと、「自身の体や生活スタイルに合った食事回数が一番良い」ということにはなりますが、1日2食と3食の食事のメリットや効果についてお話しします。
まず1日2食の場合、当然と思われるかもしれないですが、3食に比べて合計する摂取カロリーは減る可能性が高いです。現代では過度なエネルギー摂取により、肥満体型となる方が多いので、食事摂取回数を減らして、摂取する合計のカロリーを減らすということは良い案かもしれません。
日本の食事の歴史を振り返ると、奈良時代、平安時代は1日2食(朝・夕)が普通だったようです。江戸時代頃から昼も元気に働けるようにという理由や行灯の普及で生活の時間帯が長くなったことを理由に1日3食が広まってきたようです。1日3食摂ることが奨励されるようになったのは、昭和に入ってからです。栄養学が発展してきて、糖質、タンパク質、脂質、ビタミンなどを毎回の食事でバランスよく食べることで栄養効率をよくなるということが分かってきたのです。
「朝食を摂った方が良い」という科学的な根拠の1つとして、「セカンドミール効果」という、「1日の最初に食べた食事が次に食べた食事の後の血糖値に影響する」というものがあります。糖尿病の人を対象にした研究で、朝食を摂ったグループと朝食を抜いたグループを比較すると、朝食を抜いたグループの方が、昼食後の血糖値と夕食後の血糖値が高くなるという結果が示されています(Jakubowicz D, et al: Diabetes Care.2015;38(10):1820-1826.)
過度な血糖値の上昇は体重増加や内臓脂肪など蓄積、ひいては糖尿病の発症に繋がりますからなるべく避けたいですね。
現代人は炭水化物の摂取が多いことが知られていますから、朝食も炭水化物のみではなく、野菜やフルーツ、ナッツ、ヨーグルトなどを摂ることをお勧めします。またパンやご飯を食べる場合は全粒粉や玄米など精製されていないものを摂取する方が血糖値の上昇を抑えられます。
朝食を摂るメリットは他にも、体温を上げて、基礎代謝を上げる効果や体内のリズムを整える効果もあったりしますから、体重が気になる方や便秘の方、自律神経の不調がある方は朝食を食べる習慣をつけるのが良いかもしれません。
成人の場合は肝臓や筋肉にグリコーゲンという糖分を多く貯蔵できて、ある程度空腹でもグリコーゲンを分解出来て、低血糖になりにくいですが、子供はグリコーゲンを多く貯蔵出来ないので、低血糖になりやすいことが知られています。ですからお子様は朝食を必ず食べて、午前中の活動時に低血糖にならないようにした方が良いです。
まとめ
・摂取カロリーを減らすという意味では1日2食が良いかもしれません。
・だたし、朝食を抜いてしまうと、昼、夕食後の血糖の上昇しやすくなることが知られています。
・1日2食か3食かは体型や体調、生活スタイルに合わせるのが良いでしょう。
・子供は午前中に血糖値が下がらないように朝食を必ず食べましょう。
■クリニック名
医療法人社団杏音会 土屋クリニック
■院長
土屋 杏平
■所在地
〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12−15
電話番号03-3806-9029