今回は、経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト点鼻液)について紹介します。
経鼻インフルエンザワクチンは、これまで海外では既に導入されておりましたが、日本では2024年から正式に製品化され、多くの医療機関でワクチン接種が可能になりました。
これまでの注射のインフルエンザワクチンの代わりに経鼻インフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザの予防になりますので、「注射が嫌いなお子様」にとっては朗報です。
あまり聞いたことがないから心配、初めての接種で心配などあると思いますので、今回のコラムで解説していきます。
経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト)ってどんなワクチン?
日本初の鼻へ噴霧するタイプのインフルエンザワクチンです。針をささなくて済み、鼻に噴霧するだけで接種が完了するので、痛みがありません。
対象は2歳から18歳までの方です。

従来の注射のインフルエンザワクチンは13歳未満は2回の接種が必要でしたが、フルミストはどの年齢でも1回の接種で接種が完了します。

左右の鼻に0.1mlずつ、合計0.2mlの点鼻を行います。0.1mlというのは目薬2滴分くらいのごく少量です。ワクチン自体も無味・無臭であり、刺激性も少ないため、接種時の痛みはほとんどないと言われています。
実際のワクチンの大きさですが、ボールペンと比べてもこんなに小さいです↓

接種後にくしゃみをしたり、鼻をかんだとしても、噴霧した液が鼻の粘膜に付着していれば、免疫応答が開始しますので、問題ないと言われています。
注射のワクチンは不活化ワクチンといって、感染のリスクは全くありませんが、経鼻インフルエンザワクチンは弱毒化した生ワクチンであり、点鼻液に触れた場合は免疫力が低下している方だと感染が成立してしまう可能性はわずかながらありますので注意が必要です。
フルミスト接種後、2-4週間はインフルエンザ抗原検査を行った場合、インフルエンザに感染していなくても、ワクチンが反応してしまい陽性となってしまうことがあります。抗原検査を受ける場合は、医師に点鼻ワクチンを接種した旨をお伝え下さい。
その他注意としましては、卵アレルギーがある方、妊娠している方は接種が出来ません。また鼻詰まりがひどくて粘膜露出の確認出来ない方は接種が出来ません。
経鼻インフルエンザワクチンのメリットは?
なんといっても、「注射の痛みを味わなくて済む」というのが、お子様にとってはメリットだと思います。
ご家族も注射を嫌がるお子様を連れて医療機関に行くのに毎年うんざりしている方もいると思います。そんな方は経鼻インフルエンザワクチンをお勧めします。
また13歳未満でも1回の接種でワクチンが完了するので、医療機関に2度行く必要がなくなります。
ワクチンの作用機序としても、鼻や咽頭の粘膜の免疫細胞(IgA)を活性化させ、注射にはない感染予防機能が働くとも言われています。感染予防効果自体は直接の比較試験はないようですが、以前のデータと比較しても注射と大きく変わらないと考えられています。
ワクチンの値段は注射よりはやや割高にはなりますが、2025年度は、荒川区では経鼻インフルエンザワクチンも全額助成対象となっており、無料で接種可能です。(日本経済新聞 2025/2/5 子どものインフルワクチン、荒川区が「経鼻型」原則無償化)
注射も経鼻ワクチンも同じく無料ということで、希望者多くなると、供給が間に合わなくなる可能性があります。ご希望される方は早めに医療機関にお問い合わせ下さい。
荒川区南千住の土屋クリニックでは経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト点鼻液)は完全予約制にて受け付けております。
助成を利用される方は無料での接種が可能です。助成を利用しない場合は、接種費用は9000円/円(税込)となっております。
ご希望される方はWebから予約(経鼻インフルエンザワクチン)をお願い致します。
(追記)10月に入り、予約も増えております。卸業者より連絡があり、予想よりも需要が多く、11月には供給不足になる可能性がありますので、希望される方は10月中または11月初旬のご予約をお勧め致します。
まとめ
・経鼻インフルエンザワクチンはこれまでの注射とは異なり、少量で痛みがなく、接種可能なワクチンです。
・2歳から19歳未満が対象で、対象者は1回のワクチンで接種が完了します(注射のインフルエンザは13歳未満は2回接種が推奨されています)。
・注射が嫌でインフルエンザワクチンが憂鬱だった、ワクチン接種を回避していたなどの方は是非経鼻インフルエンザワクチンをご検討下さい。
・2025年度は経鼻ワクチンも荒川区の助成を利用する場合は無料での接種が可能です。
土屋クリニックでの経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト)予約はこちらから
よくある質問
・何歳以上は経鼻よりも注射の方がよいなど目安はありますでしょうか?
経鼻インフルエンザワクチンの対象年齢は2歳から19歳未満となっています。注射と経鼻ワクチンは効果は同等と言われていますので、比べるとしたら、注射による痛みの回避のメリットと値段のデメリットを比較して頂き、ご検討頂ければと思います。
・フルミストを打って、インフルエンザを発症することはありますか?
フルミストは弱毒化ワクチンですので、フルミスト接種後にインフルエンザを発症するという報告はあります。
臨床試験では接種から28日後までに発現し、有害事象として報告されたインフルエンザ感染者例は、フルミスト群で11/608例(1.8%)、プラセボ群で0/302例(0%)とのことでした。
報告数としてはわずかではありますが、接種後発熱が続く場合は注意が必要です。
・点鼻インフルエンザワクチンの副反応はどんなものがありますか?
よくみられる副反応としては、鼻詰まりや鼻汁が知られています(約60%)。咳、喉の痛み、頭痛、発熱、倦怠感などがあります。まれにアナフィラキシー反応(蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下など)が報告されています。
・インフルエンザワクチンは毎年受けたほうが良いのでしょうか?
インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されたウイルスを用いて製造されています。またインフルエンザワクチン(経鼻)の効果は1年程度で落ちてしまうので、毎年受けることをおすすめします。
・インフルエンザワクチンはいつ受けるのが良いでしょうか?
日本では、インフルエンザは例年12月~3月頃に流行し、例年1月末~3月上旬に流行のピークを迎えますので、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。
ただし、2025年10月時点でインフルエンザ感染者も多くなってきているので、早めに打っていただくことをおすすめします。接種から抗体形成まで約2週間程度かかりますので、そちらも検討材料に入れていただければと思います。
・他のワクチンと同時接種はできますか?
他の注射のワクチンと同時に接種することも可能です。他のワクチン接種後でも何日間隔を空けなければなれないなどの制限もございません。
・フルミスト接種後に家族にインフルエンザが伝染ることはありますか?
健康成人であれば、基本的に伝染する心配はしなくても良いと思います。ただし、免疫不全の方や6ヶ月未満の乳児など弱毒化ワクチンでも感染のリスクがありますので、接種直後の接触がないようにご注意ください。
・どうして経鼻インフルエンザワクチンは2歳未満は接種できないのですか?
接種推奨年齢は2歳から19歳とされており、2歳未満は海外の臨床試験にて、接種後の入院や喘鳴リスクが増加したとの報告があり、推奨されておりません。
理由としては、経鼻インフルエンザワクチンは弱毒生ワクチンであり、2歳未満ではまだ十分に免疫が構築されていない可能性があるためと考えられています。

■クリニック名
医療法人社団杏音会 土屋クリニック
▪️標榜科
内科、消化器内科
■院長
土屋 杏平
■コラム著者・監修
■所在地
〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12−15
■電話番号
03-3806-9029


