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”卵”は本当に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を上昇させる??

2025.10.25

今回は「卵」が本当に悪玉コレステロールを上げる原因になるのかということについて、最新の論文を元に解説出来ればと思います。

卵は昔から食べすぎるとコレステロールが上がると言われていました。

確かに卵1個あたり約200mgのコレステロールを含むと言われており、食物の中では多い部類に入ります(豚ロース肉 100gあたり60mg)。

そもそも卵がコレステロール上昇の原因といわれるようになったのは、100年近く前のロシアの研究でコレステロール摂取が人体に与える影響を調べるために、卵を、ウサギに食べさせて実験しました。その結果、動脈硬化のもとといわれる血中コレステロールが増加し、タマゴを食べるとコレステロールが上がるという印象がうまれてしまったのです。ただし、ウサギは草食動物かつ人間と代謝が異なりますし、動物性の脂肪を含むタマゴを食べさせればコレステロールが増加するのは当然かもしれません。

コレステロールの代謝について

コレステロールは、さまざまな臓器(肝臓や腸や皮膚など)で作られています。体内で作られたコレステロールを「内因性コレステロール」といいます。これが、体内のコレステロール全体の70-80%を占めるといわれています。
一方、食事として摂取したコレステロールは小腸で吸収されます。これを「外因性コレステロール」といい、全体の20-30%を占めるとされています。
食事中のコレステロールはすべて吸収されるわけではなく、吸収率には20%から80%程度と大きな個人差があります(平均で50%程度)。

食事中の他の成分によってもコレステロールの吸収は影響をうけ、特に食物繊維や植物性ステロールを多く含む食事では吸収されにくくなります。

このことから、摂取するコレステロールよりも体内で作られるコレステロールの方が多く、血中コレステロールもその影響が高いことが分かりますね。

この後、論文に基づいた卵摂取とLDL値の関連について解説をしていきます。

LDL値における卵と飽和脂肪酸の影響についての最新研究

今回紹介する研究は「Impact of dietary cholesterol from eggs and saturated fat on LDL cholesterol levels: a randomized cross-over study(Carter S, et al. Am J Clin Nutr. 2025;122:83-91)」です。「The American Journal of Clinical Nutrition」7月号で発表されたものです。

この研究では、「卵はコレステロールは多く含む一方で、飽和脂肪酸の含有量は少ない」という点に目をつけ、研究を行ったものでした。

飽和脂肪酸とは、バターやチーズなどの乳製品、ラードやベーコンのような動物性脂肪に含まれている成分のことです。

体内の悪玉コレステロールの指標であるLDLコレステロールは100mg/dlを超えると心臓病のリスクとなり、160mg/dl以上となると、「高リスク」といわれています。LDLが高値になると、動脈内にプラークが形成され、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となります。

今回の研究では、LDLが135.35mg/dl未満の成人61人(平均年齢39歳±12歳)を対象にランダム化クロスオーバー試験を行い、食事由来のコレステロールと飽和脂肪酸がLDLに与える影響を検討しています。

対象者は5週間ずつ3種類の食事法をそれぞれ実践し、各食事法の完了後に血液検査でLDLの評価を行いました。3種類の食事法は「卵摂取群」、「卵なし群」「対照群」です。「卵摂取群」は卵を1日2個摂取し、コレステロールは600mg/dayと多く摂る一方で飽和脂肪酸は少なめ(エネルギー比率6%)という食事です。「卵なし群」は卵は摂取せず、コレステロールは少なめ(300mg/day)、飽和脂肪酸は多め(エネルギー比率12%)、「対照群」はコレステロールも多め(600mg/day、卵1個/週)、飽和脂肪酸も多め(エネルギー比率12%)という食事法です。

研究の結論

研究の結果としては「卵摂取群」と「対照群」を比較して、「卵摂取群」がLDLが低くなることが示されました。

また全ての食事法において、飽和脂肪酸の摂取量はLDL値と正の相関を示したのに対し、コレステロールの摂取量とLDL値には有意な関連は認めませんでした。

このことから、卵の摂取はLDL上昇に大きな関与はせず、飽和脂肪酸がLDL値上昇の原因となると結論付けられています。

まとめ

今回の論文では、

・卵の摂取はLDL上昇に大きな関与はしない

・飽和脂肪酸(バターや加工肉食品など)はLDL上昇の原因となる

ということでした。

脂質異常症、LDLが高いなど指摘を受けたことがある方は、是非参考にして頂ければと思います。

土屋クリニックでは脂質異常症の方の治療や食事療法などを含めた経過観察を行っております。健康診断で脂質異常症(高LDL血症や中性脂肪高値)など指摘された場合は、是非ご相談ください。

■クリニック名
医療法人社団杏音会 土屋クリニック

■標榜科

内科、消化器内科

■院長
土屋 杏平

■コラム著者、監修

土屋 杏平

■所在地
〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12−15

■電話番号
03-3806-9029

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