今回は、風邪を引いて声が枯れて声が出ない時の対処法をお伝えしたいと思います。

先日私も喉がやられてしまい、数日間ほとんど声が出ない中、診療を行っていました。その間に来ていただいた方にはご迷惑をおかけしまして申し訳ございませんでした。
現在は今回お伝えする対処法のおかげで回復してきましたので、今回皆様にその対処法をお教えします。
①なるべく声を出さず、安静にする
喉が枯れてしまい、声が出ない時は、咽頭炎から喉頭炎に進行してしまっている可能性が考えられます。
咽頭(いんとう)は口の奥のすぐ見えるところで、喉頭(こうとう)はもう少し奥で声帯といって声を出す器官がある部分になります。

よく風邪を引いて喉が痛くなるのは咽頭炎のことが多く、喉頭まで炎症が波及すると声枯れや声が掠れてしまうといった症状が出ることになります。
炎症というのは、粘膜が腫れてしまっている状態なので、その状態で声を出し続けると、余計に炎症が悪化し、治るまで時間がかかります。
炎症の状態を確認できる日常の例でいうと、皮膚を擦りむいて傷が出来て、赤くなった状態などです。

皮膚の炎症が起きている時に、何度も擦ったり、洗ったりすると治りが遅くなるのがなんとなく想像できますでしょうか。
細胞が再生するのを待ち、なるべく刺激を与えないのが一番の完治の近道です。
同じように喉頭炎が起きてしまっている時も、声を出す声帯に負担をかけないように声を出さず安静にすることが非常に重要です。
声帯は乾燥にも弱いですから、水分を多く取り、加湿することも重要です。
飲酒や喫煙も悪化の原因になるので、喉が枯れている時期は控えるのが良いでしょう。

②薬を使う
喉の炎症を抑えるには自然に収まるのを待つことも重要ですが、早く直したい場合は、薬を使うと良いでしょう。
1つは、喉の粘膜の炎症を抑える「トラネキサム酸」という薬です。
ウイルス・細菌感染や乾燥、異物などで喉の粘膜がプラスミンという物質を放出し、それが炎症を悪化させることが知られています。
トラネキサム酸はプラスミンの産生と増加を抑えることで喉の炎症を悪化させないようにする作用があります。
ですから、なるべく早めの段階でトラネキサム酸を使用することが炎症をひどくさせないためのポイントになります。
もう1つは、うがい薬の「アズノールうがい液」です。
アズノールは抗炎症作用があり、塗り薬でも使うことがあります。うがい液では喉に直接作用することで喉の炎症を沈めます。

③漢方を使う
安静にすることと、一般薬(トランサミン、アズノールうがい液)で治らない場合は、漢方の使用を勧めます。

①桔梗湯(ききょうとう)
桔梗湯は保険診療でも処方可能な薬です。桔梗(ききょう)は喉の炎症を抑えたり、痰などの分泌を減らしたりなど咽頭炎・喉頭炎に特化した作用を持っています。
顆粒の薬をそのまま飲んでも良いですが、お湯などに溶かして、うがいをしながら喉に直接触れさせてゆっくり飲むことでより効果が高くなると言われています。
喉の症状でお困りの方は、是非お試しください。
②響声破笛丸(きょうせいはてきがん)
響声破笛丸は保険診療では処方が出来ず、薬局やドラッグストアなどでご購入頂く必要があります。

ドラッグストアなどの棚に陳列されていることが多いですが、陳列にない場合は、薬剤師の方に声をかけていただくか、Amazonなどのショッピングサイトでご購入をご検討ください。
響声破笛丸は歌手や声優、講師など声を出す仕事の人には”声が出ない時に頼れる薬”としてよく知られています。
自分の高校時代に予備校の先生が声が枯れて授業ができない時に、「喉が枯れて声が出ない時は、響声破笛丸を飲むと良いんだ」という話を聞いて、翌日には回復していたのを見て驚いた記憶があります。
私も診療を行っていて、既存の薬で改善が乏しい場合は、この”響声破笛丸”を勧めることがあります。これまでも、歌手が「明日どうしても大事なステージがあり、歌わないといけないんです」やサッカー選手が「試合で声が出ないとプレーができない」、お笑い芸人が「明日収録があってどうしても声を早く回復させたい」というような要望があった時にこの薬を勧めました。

必ず翌日には声が出るようになると断言は出来ませんが、喉が枯れてしまい、声が出ない時には有効だと思っています。
まとめ
今回は喉枯れ、声が出ない時の対処法を3つご紹介しました。
注意としては、自身の判断で薬を使ったり、経過を見ることも出来ますが、やはり治りが悪い、悪化する場合は、一度医療機関を受診することをお勧めします。
細菌感染が悪化して、扁桃腺炎、喉頭炎になっている場合は、抗生剤の治療が必要となったり、炎症がひどいと声帯結節を形成して長引く場合もあります。
慢性的な声枯れでは、甲状腺の病気、咽頭癌・喉頭癌、逆流性食道炎、食道癌、大動脈の病気など喉が原因ではなく症状が起きている可能性もありますので、心配な方は一度土屋クリニックにご相談頂ければと思います。

■クリニック名
医療法人社団杏音会 土屋クリニック
■標榜科
内科、消化器内科
■院長
土屋 杏平
■コラム著者、監修
■所在地
〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12−15
■電話番号
03-3806-9029

