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夏場に注意が必要な黄色ブドウ球菌による食中毒について

2024.07.30

”うなぎ弁当”を食べたことによって140人近くの集団食中毒が発生したとのニュースがありました。

今回はその原因となった”黄色ブドウ球菌”の食中毒について、解説したいと思います。

 

黄色ブドウ球菌とは

黄色ブドウ球菌は、”細菌”に分類されます。ノロウイルス、コロナウイルスなどの”ウイルス”は生物の細胞に侵入してウイルスの量を増やしますが、”細胞”は栄養があれば自身で細胞分裂を起こすことが出来ます。栄養が豊富なお弁当などは黄色ブドウ球菌が増えやすい土台になりやすいです。黄色ブドウ球菌による食中毒は”うなぎ”自体に特有な食中毒ではありません。

食中毒は「感染型」「毒素型」に分かれます。

「感染型」は大腸菌やカンピロバクターなど、摂取した後に体内で細菌が増殖し、食中毒の症状を起こします。

黄色ブドウ球菌は「毒素型」の食中毒を起こすことが知られています。

黄色ブドウ球菌は、”エンテロトキシン”という毒素を産生します。このエンテロトキシンを摂取することで食中毒の症状が出現します。

「感染型」の食中毒は細菌が体内で増殖する時間が必要となるため、潜伏期間が比較的長く、おそよ8時間以上してから症状が出現し始めます。

一方で「毒素型」は摂取から症状が出現するまでが早いのが特徴です。摂食後、30分から数時間で発症することがほとんどです。

症状・治療について

黄色ブドウ球菌による症状は、一般的な食中毒と同様に、「嘔気(吐き気)・嘔吐」、「腹痛」、「下痢」です。毒素型の食中毒である黄色ブドウ球菌の特徴としては、吐き気や嘔吐の症状が強いことです。

発症までが早いので、小腸、大腸と細菌や毒素が降りてくる前に大半が嘔吐で排出されてしまうことが多いです。

軽症の場合は、摂食後何度か嘔吐し、その後は症状は長引かないこともあります。

治療法は、対症療法が基本となり、制吐剤や鎮痛剤、整腸剤などを使用し、症状が治まるのを待ちます。嘔気や嘔吐がひどく、水分や食事摂取が出来ない場合は、点滴治療が必要になる場合もあります。

高齢であったり、基礎疾患がある場合は、少しの脱水で臓器不全が進行しやすいこともありますので、注意が必要です。

抗生剤(抗生物質)による治療は基本的に不要です。黄色ブドウ球菌による食中毒は産生された毒素が原因であり、毒素に対しては抗生剤は効果はありません。

予防法

黄色ブドウ球菌の食中毒の予防としては、まずは食べ物に黄色ブドウ球菌を付着させないことです。黄色ブドウ菌は皮膚の表面に存在しています。なので「料理の前の手洗い」が重要です。

手指に傷があったりすると、そこで黄色ブドウ球菌が繁殖しやすくなりますから、手袋を付けるなどして傷を覆って料理をするように心がけましょう。

温度調節も重要です。黄色ブドウ球菌は室温だと繁殖しやすいので、料理を作った後は冷所に保存しておきましょう。夏場の高温・高湿は黄色ブドウ球菌にとって繁殖しやすい状況といえます。

黄色ブドウ球菌が一旦毒素を産生すると、加熱しても感染を防げません。黄色ブドウ球菌自体は加熱で死滅しますが、毒素は100℃で30分加熱しても失活しないことが知られています。

 

まとめ

・黄色ブドウ球菌は「毒素型」の食中毒であり、細菌をつけない・増やさないための食品衛生が重要である(一度毒素が産生されると加熱しても感染が予防できません)。

・多くは嘔吐のみで軽症で済むが、水分摂取や脱水が進行する場合は注意が必要です(症状が強い場合は医療機関を受診しましょう)。

 

今回は夏場に注意が必要な「黄色ブドウ球菌」の食中毒について解説を行いました。

うなぎ弁当の食中毒のニュースを振り返ると、黄色ブドウ球菌が産生した毒素が繁殖している弁当を買って食べてしまったら、その後加熱しても感染予防は出来ませんから購買者は食中毒に対して抗うことは出来なかったと思います。

猛暑が続いており、細菌も繁殖しやすくなっていますから、食品を扱う関係者や家庭で料理する方も食品衛生意識を今一度高めましょう。

 

■クリニック名

医療法人社団杏音会 土屋クリニック

 ■院長

土屋 杏平

■所在地

〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12−15

電話番号03-3806-9029

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