高血圧と言われたことがある、治療中である方で、「どれくらい運動すると良いか」という疑問をお持ちの方がいらっしゃると思います。
今回は2025年1月11日に発表された論文を元に、「高血圧の場合、1日何歩くらい歩いたら良いのか」ということをお伝えしたいと思います。
直訳すると、「アメリカの高血圧患者における毎日の歩数と全死亡率・心血管疾患による死亡率との関連について」です。
背景
高血圧において、身体活動は健康増進に良い効果を与えるということは、これまでも多くの論文などで報告されており、一般的にもよく知られていますが、具体的にウォーキングであれば、何歩くらい歩いたらいいかということは言及されてきませんでした。
ウォーキングは、循環の促進や血圧の低下を促し、また運動による体重減少や運動による精神的ストレスの軽減などにより全死亡率・心血管死亡率の低下に寄与すると考えられています。
今回紹介する論文ではアメリカの2005年から2006年の国民健康栄養調査(NHANES:National Health and Nutrition Examination Survey)を元に、約12年間の経過を追って、1日の歩数と死亡率との関連が報告されています。
結果
歩数によって4群(Quartile 1:<4346歩/day、Quartile 2:4346〜7319歩/day、Quartile3:7319〜10148歩/day、Quartile4: >10148歩/day)に分けられていますが、a(全死亡率)、b(心血管死亡率)ともに、歩数が多い方が死亡率が低いということが報告されています(下記グラフ参照)。
続いて、何歩歩くのが一番良いのかということを導き出すために、歩数と死亡率の関係性を詳しく解析すると、次のようなグラフになったそうです。
a(全死亡率)での、閾値は「1日あたり8250歩」、b(心血管死亡率)では、閾値は「1日あたり9700歩」という結果でした。
これ以上歩数を増やしても死亡率を下げるのにあまり有効ではなかったり、心血管死亡率に関しては、歩数が増えるとやや死亡率が上がってしまうという結果でした。
結論
高血圧の方では、1日に8250歩-9700歩くらいを目安にウォーキングを行うと、心血管やその他の死亡リスクを下げることが出来るということが今回の論文から学ぶことが出来ました。
この目標に達しなくても、歩数が上がるほど、死亡リスクは下げられることも報告されていましたから、なるべく1日に多く歩くようにしましょう。
毎日8000歩から9000歩近く歩くのは難しいという方も、日本人が2023年に発表した論文(Inoue K, Tsugawa Y, Mayeda ER, Ritz B. Association of Daily Step Patterns With Mortality in US Adults. JAMA Netw Open. 2023;6(3):e235174.)で、週に1-2回8000歩近く歩くだけでも全死亡率・心血管死亡率ともに大きく下げることが出来るという報告がありますから、週に1-2回でもウォーキングの機会を設けることは重要です。
まとめ
・高血圧の方にとって、習慣的なウォーキングを行うことは健康増進にはもちろん、死亡率の低下をもたらすことが知られています。
・具体的には”1日8250歩から9700歩”くらいが死亡率を下げるのに最適だという論文の報告がありました。
・毎日達成できなくても、週に1−2回でも8000歩近く歩くことは有効であり、習慣的なウォーキングが健康保持のためには重要です。
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医療法人社団杏音会 土屋クリニック
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