最近麻疹(はしか)の患者数が国内外で急増しているというニュースをよく耳にしますね。

実際に令和8年の麻疹の国内の患者数は239人と過去10年で最多の数字となっています。(2026年5月現在)
今後も流行拡大の懸念がされており、荒川区でも麻疹の予防の対策を6月から開始する予定となりました。
今回は「麻疹(はしか)」について解説したいと思います。
麻疹(はしか)とはどんな病気?
麻疹はウイルス感染症で、空気感染が主な感染経路ですが、咳やくしゃみによる飛沫感染、手や鼻、口に触れることによる接触感染によっても感染するリスクがあります。発症した人が周囲に感染させる可能性があるのは症状が出現する1日前から解熱後3日くらいまでといわれており、特に感染力が強いのは発疹の出現前頃といわれています。
麻疹の感染力は極めて強く、麻疹に対して免疫を持っていない人はウイルスに暴露すると、ほぼ100%感染すると言われています。

人から人にうつす力も強く、1人の患者から何人の患者にうつすかを数値化した指数では、インフルエンザは1-3、コロナは2.0-2.5、麻疹は12-18となっており、インフルエンザやコロナと比べて10倍近い感染力があるといわれています。
感染を防ぐにはN95マスクを装着し、陰圧管理を行わなければならず、一般の家庭の中や公共機関では感染拡大を防ぐことは不可能です。
麻疹の症状については、典型的には10日から12日の潜伏期間の後、38度台の高熱や風邪症状が2-3日続き、その後39度以上の高熱とともに全身の発疹が出現します。
麻疹に特徴的なのは、2峰性の発熱といって、1度高熱が出て、下がり、またもう一度高熱が出るということ。そして2回目の高熱発症時に全身に拡がる赤くまだら状の発疹が特徴的です。

白目が赤くなる結膜充血もよくみられます。口の中の奥歯の近くの頬粘膜にコプリック斑といって、白い斑点が出るのも麻疹の特徴ではありますが、なかなか見つけるのは難しかったりします。
「修飾麻疹」といって、麻しんに対する免疫が不十分な人に生じる場合は症状が軽く、皮疹なども非典型的な場合もありますので、医療者が診断するのにも注意が必要です。
麻疹は多くの場合、風邪と同じように、熱が出て、自然に改善していく経過を辿るのですが、稀に合併症を起こすこともあります。代表的なのは、肺炎、中耳炎、脳炎などです。肺炎や脳炎では重症化して死亡のリスクもあります。先進国であっても、1000人に1人の割合と言われています。
麻疹に対しての治療は現代の医療でもなく、対症療法のみとなります。感染初期であれば、緊急ワクチン接種で発症を予防できる可能性もあります。
麻しん感染者への接触があった場合やもしかしたら麻しんの症状に当てはまるかもしれないと思った場合は、医療機関にご相談ください。
海外でも実は麻疹の流行は拡大しており、海外旅行に行った後に発症するケースもありますので、上記の症状に当てはまるようなことがあれば医療機関に海外旅行した旨をお伝えください。
麻疹の予防接種について
麻疹は感染力がとても強いことや合併症による重症化や死亡リスクがあることから、予防接種が推奨されています。
麻疹の予防については、2回接種することで予防効果が高くなることが知られています。
2006年以降は麻疹・風疹(MR)ワクチン2回の定期接種が導入されており、1回目を1歳から2歳未満、2回目を小学校入学前の1年間に接種するようになっています。

ただ世代によっては、麻疹ワクチンの接種をしていない可能性が高く、以下の年代に当てはまる方は、麻疹の抗体を持っていないかもしれません。
「昭和47年(1972)年9月30日生まれ以前」の方は、麻疹のワクチンを打っていない可能性が高いですが、この時期には麻疹が広く流行していたので、多くの場合自然感染で免疫を獲得済みかもしれません。
「昭和47(1972)年10月1日から平成2年(1990)年4月1日生まれ」の方は、麻疹ワクチンを1回のみ接種している可能性が高く、2回目を接種していない場合は、追加接種が推奨されます。
「平成2(1990)年4月2日から平成12(2000)年4月1日生まれ」の方は、麻疹ワクチンを1回は接種している可能性が高く、その後特例措置で2回目を接種できる機会はありましたが、2回目の接種を受けていない場合は、追加接種が推奨されます。
「平成12年(2000)年4月2日生まれ以降」の方は、定期接種で2回接種している可能性が高いです。ただし何らかの理由で2回目の接種を行っていない場合は、2回目の接種が推奨されます。
どうして麻疹が流行しているの?
理由として考えられるのは、2つです。
1つ目は、「海外からの輸入感染」です。日本ではワクチン接種率が高まり、国内での麻疹の感染は著しく低くなり、2015年にはWHO(世界保健機構)より麻疹の国内伝播がない状態である「排除状態」の認定がされました。コロナ禍が終わり、海外からの観光客も増えたり、日本からの海外旅行者も増え、麻疹を海外から持ち込むリスクが高くなりました。海外においては麻疹蔓延国は多く存在します。イエメン、インドネシア、インド、パキスタン、アンゴラなどが麻疹報告数上位ではありますが、ヨーロッパやアメリカなどでも日本と比較すると麻疹は流行しており、海外旅行後に麻疹発症するリスクがあり、帰国後2週間は注意が必要であることも知っておいて下さい。(参考:厚生労働省検疫所のホームページより)

2つ目は、「ワクチン接種率の低下」です。令和6年度のMRワクチンの接種率は第1期(1歳児):94.5%、第2期(小学校就学前1年間):90.4%であり、麻疹排除に必要な予防接種率95%を下回っています。2020年度は第1期は98.5%、第2期は94.7%であり、数年前と比較しても接種率の低下が伺えます。定期接種化されているのにも関わらず、子供がワクチン接種の機会を逸していることが麻疹の感染拡大に繋がっているのかもしれません。
荒川区緊急麻しん対策について
2026年6月1日から荒川区在住の方については、麻しん感染対策として、抗体検査、予防接種が対象の方に対して助成が出て、無料で検査・予防接種を受けられることとなりました。
詳細については、土屋クリニックのニュース(荒川区麻しん緊急対策について 2026/5/30)に記載しておりますので、ご一読ください。
荒川区のホームページにも詳細がありますので、こちらも確認頂ければと思います。(参考:荒川区ホームページ 麻しんの抗体検査及び予防接種費用の助成について(緊急対策))
まとめ
・麻疹は通常の風邪症状に加えて、結膜炎や皮疹が出現するのが特徴的です。いつもと違う症状を感じた場合は、医療機関にご相談ください。
・麻疹は感染力が強いウイルスであり、抗体を持っていない人はワクチン接種をしておくことをお勧めします。
・荒川区にお住まいの方で麻疹の抗体検査や予防接種の対象の方は無料で検査が受けられますので、ご相談ください。

■クリニック名
医療法人社団杏音会 土屋クリニック
■標榜科
内科、消化器内科
■院長
土屋 杏平
■資格
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医
日本医師会認定産業医
日本小児科学会 会員
日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医
日本内科学会認定内科医
荒川区立第三瑞光小学校 学校医
■所在地
〒116-0003 東京都荒川区南千住7丁目12−15
■電話番号
03-3806-9029

